前回は、岡田斗司夫さんの切り抜き動画の話題をもとに、「貨幣」を与えたことで社会が崩壊したサルの実験によってその恐ろしさをあらためて理解したとともに、「お金をめぐっての事件やネガティブな心理は、輪廻転生を妨げるカルマ」ではないかということを示唆したところで筆を置きました。
貨幣経済恐るべし
https://zarara1111.blogspot.com/2024/06/blog-post_5.html
「貨幣」について考える手助けとなる漫画作品があります。アニメにもなった『へうげもの』の作者・山田芳裕さんの『望郷太郎』です(連載中)。amazonの作品紹介文(1巻)を以下に引用します。
大寒波襲来、壊滅的打撃、世界初期化。人工冬眠から500年ぶりに目覚めた舞鶴太郎(まいづるたろう)は、愛する家族も財産も全て失った。絶望の淵から這い上がり、理想の暮らしと生きがいを求めて、祖国「日本」を目指す。ヒトのと文明の歴史をさかのぼるグレートジャーニー。人類よ、これが未来だ。
主人公の「太郎」は、いずれは日本を代表する財閥のトップを引き継ぐべく、マネーゲームに身を投じ、危ない橋も渡ってきた男です。
目覚めた〝新世界〟で太郎は、五百年前の文明の遺物を利用しつつも、狩猟採集生活をする人間の姿を目にします。しかしながら、ストーリーが進むにつれて、すでに「貨幣」よって支配する者とされる者との対立があることを知ります。
五百年前の赴任先であった中東の地から、一人残した娘のいる日本を目指す中で、太郎は様々な〝思想〟や〝行動原理〟を持つ人間と遭遇します。五百年前の世界を熟知する太郎は、かつて実現できなかった世界を貨幣と文明の遺物を利用しつつ目指そうとします。太郎と行動をともにする登場人物たちにもそれぞれが思い描く世界があり、貨幣と文明を否定をする者、ヒエラルキーの頂点を目指して虐げられた仲間たちとの連帯を第一とする者とが、一様ではない動機で付いたり離れたりします。
太郎の前に立ちはだかるのは、貨幣の発行権を持つ者の周囲をうごめく人間たちですが、太郎が訪れる国々の背後にはさらなる大国が存在し、どこに至るのかがまるで見えません。……貨幣経済社会を〝真に〟制する者は誰なのかを考えさせられながら読み進めてしまいます。
「人工冬眠」中に死亡していてもおかしくなかった太郎にとっては、ハンデが相当に外されたボーナス・ステージのような人生を送っているので、他の登場人物の生活と文化、社会を俯瞰的な視点でとらえています。そして太郎のその視点が、とりもなおさず人類の歴史を批判的にとらえ、漫画的表現によって解釈がされているというのが作品のおもしろさだと思います。
(前作の『へうげもの』でも、主人公の個性を通じての大胆な歴史解釈には舌を巻きましたが、『望郷太郎』でさらにパワーアップしている感じです。)
さらに、『望郷太郎』で注目すべきは、多くの人が気づくことなく過ぎてしまう前世・過去世上の大きな問題を随所で描いていることです。
(次回につづく)
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