前回は、今秋にアニメ化を控えている『チ。―地球の運動について―』を紹介しました。
【人間存在に対する新たな認識を得る作品紹介】魚豊『チ。―地球の運動について―』〈表〉
https://zarara1111.blogspot.com/2024/08/blog-post_22.html
この作品について、「最初から(文字通り〝最初から〟かもしれません……)受け付けないという方もあると思った」と書きましたが、残虐すぎる拷問の描写から始まるからです。
先に『望郷太郎』(<裏>テーマの方において)を紹介した際にも、信じがたいような残虐描写があることをお伝えしました。
【人間存在に対する新たな認識を得る作品紹介】魚豊『チ。―地球の運動について―』〈裏〉
https://zarara1111.blogspot.com/2024/08/blog-post_23.html
『望郷太郎』では、「人肉食」に始まって「人身売買、嗜虐的な饗応(脅迫材料にもする)や人皮靴といった、目を覆いたくなるような出来事」が描かれていましたが、「拷問」もまた、人が前世・過去世に目を向けた際に誰もが避けては通れない所業であることを、前世・過去世のチャネリングでお世話になった方に教えられました。
そして、『チ。』には拷問以外にも、人間の残虐さとその背後にある弱さや愚かさを思い知るような登場人物の行動が数多く描かれています。ーー盲信、排斥、保身、侮蔑、脅迫、その他欲望の数々と、世代間でそれらが交代しながら憎悪とともに引き継がれていく様に、身震いが止まらくなるような場面も多々あります。
前回記した<表>では、「ある真理」の美しさに魅せられた登場人物たちの生命の輝きの面に焦点を当てましたが、良心に従ったゆえに死ななければならない登場人物に対しても、私は同様の問題意識を読み取ることができました。
一方で、自らの罪深さに気づいて生き続ける登場人物に対する救いがたい思いにも、共感を覚えるのです。私は、前者でいられる自信はまるでないからです。〝病んで〟いる世界や時代や人々(自分も含め)に疑問を感じることすらなく大勢の人間たちと同じように振舞ったであろうし、もっと言えば、そうした中で積極的に〝異分子〟を密告したり、自ら手を下した可能性だった否定できません(実際、している)。ーーおそらく〝正義〟とか〝神〟とかいう名のもとにです。
『望郷太郎』でも『チ。』でも、まずは前世・過去世の自分が犯したであろう過ちに気づかされる点で評価されるべき作品であるのですが、『チ。』に関しては特に、残虐な行いを与えてしまった相手に対してくり返し詫び、過ちを犯してしまった相手を許し、弱くて愚かな自分自身を受け入れることの重大さにも気づかせてくれる作品であると私は考えています。
0 件のコメント:
コメントを投稿